おかーさんも、おじさんも、同じなの? 米田や校長も?

みんな、正解を探してるのかな?

いろんな選択をして、時には後悔もして、傷つきながら、いろんな種類の痛みと闘いながら、大人になったのかもしれない。もしかしたらみんないまもなにかと闘っているのかもしれない。割りきれないことだってあるのかもしれない。


あたしはなにしてるんだろう――って思った。


自分の気持ちばかりを主張して、無知なクソガキのまま、おかーさんやおじさんに守られているだけ。

やっと気づいた。あたしがいま、どれほど恵まれているのか。どれほど幸せなのか。

自分が、どれほど弱く、ちっぽけな存在なのか。


本当の強さって、違うね。気持ちを主張するばかりじゃ手に入らないものだよ。芯があるってのはきっとそういうんじゃない。

わかるよ。
わかったよ。

痛くても、こわくても、乗り越えなくちゃいけないものがあるってこと。逃げちゃいけないってこと。踏ん張らないといけないってこと。

きしむ体を引きずってでも、守りたいものが、あたしにもあるんだってこと。


「……2学期から、行く。学校。行く」


それを言うので精いっぱいだった。でもそれ以上になにかを伝える必要はないんじゃないかって思った。

のどの奥がつんとする。それでも泣かなかった。