「きっとどんな生き方したって後悔はするもんだし、それはしょうがねえことだ。ひとつの後悔もない人生なんて絶対にない」


亡くなったミナさんのことを想った。おじさんは、彼女が事故に遭った日の前日にお酒を飲んでいたこと、ずっと後悔しているんだと思う。どうにも胸が痛んだ。


「退学を選んでも、在学を選んでも、たぶんそれなりに後悔するだろうし、それなりに納得もする。人生ってそういうもんだ。過ぎてみねえとわからないことだらけでうんざりするよ」


人間はバカだからな。と、おじさんは言った。こないだあたしが言った台詞だ。


「まあ、だからこそ、やれることはやっといてもいいんじゃねえのかって、俺は思うけど」

「やれる、こと……」

「こないだも言ったけど、10代は二度と戻ってこねえよ。10代だけじゃない。どんな瞬間だって永遠に戻らない」


だから、と、おじさんは続けた。


「それなら、やらずに後悔するより、やって後悔するほうを選べ」


おじさんは、学校に行けとも、行くなとも、絶対に言わないって思ってた。だから意外だった。


「『マイノリティー』の“こっち側”で人生を割りきるには、おまえはまだ若すぎる」


行けって、言われてるんだ。

やれることはやっておけ。
後悔しても、割りきるな。

それは、学校に行けってことだ。


おじさんの言葉が胸にくる。刺さる。おかーさんの言葉といっしょに、あたしの全身を貫いていく……。


「うん……」


わかんないな。

どうすることが、どう生きていくことが正解なのか、ぜんぜん見当もつかない。もしかしたら正解なんてないのかもしれない。同じように、不正解だってないのかもしれない。

難しい問題。でもきっと、ずっと、逃げられない問題。逃げてはいけない。解けなくてもいいかわりに、解こうとするのをやめてはいけない、いじわるなもの。