「『武器』は、祈自身の身を守るために、たまに必要なものだよ」
うなずくと、答えるようにおかーさんもうなずいて、そっとほほ笑んでくれた。
「どんな生き方をしたっていい。ただ、自分の人生を誇れるような生き方をしてほしい。世界中に非難されたとしても、『これがわたしなんだ』って胸を張れるような人生を送ってほしい。
そうやって、信念を持って芯のある女性になることも、おかーさんは『武器』のひとつだと思うんだ」
きっとおかーさんはそういう生き方をしてきた。してる。だからそういうことを言えるんだって思う。
芯のある女性。って、なんだろう?
高校生のころ好きになった10も年上の男とのあいだにできた子どもを、ひとりで産んで、ひとりで育てて、再婚もしないで、いまだにその男に恋してる――。
おかーさんは芯のある女性だ。母であることも、女であることも、キャリアウーマンであることも、なにひとつ妥協しないで生きてる、かっこいい女性だ。
あたしはほんとにこのひとのお腹から産まれてきたんだろうか? こんなにも強くて、美しい女性と、ほんとに血がつながっているんだろうか?
おかーさんみたいになりたいって思うけど、それは無理なんじゃないかとも思うよ。
なれなくたっていいんだ。だっておかーさんはあたしの永遠の憧れだもん。
まっすぐあたしを見つめてくるキレイな瞳を眺めた。なんだか途方もない気持ちになった。
「そうだな。そういう生き方をしていけばいいって、俺も思う」
いままで押し黙っていたおじさんがいきなり声を出した。