校長も、いるのかよ?

そりゃそうか。学校をやめるとか、やめないとか、けっこう重要な面談だっけね。

でも、そうか、重要なのか、きょう、あたしの人生が決まってしまうのかもしれないのか。こんな面談で、これからのすべてが決まっちゃうのか。


「祈」


はっとした。低い声が降ってきた。おじさんの声が、優しい音で鼓膜を揺らしたのだった。

おじさんはあたしの名前を呼んだ以外にはなにも言わない。ただぐしゃりと頭を撫でるだけ。

それでも、こっちを見ようともしない男に、不思議なほど安心させられていた。


おかーさんがあたしを振り返る。米田と校長がこっちを見て、わざとらしい笑顔をつくった。


「久しぶりだな、中澤」


優しく言った米田に、あたしはなにも答えられなかった。だってなにを言ったらいいかわからない。どんな顔をすればいいのかもわからない。

最高に居心地が悪いな。校長とか、話したこともないし。

やだな。米田も、校長も、あたしのこと腫れ物みたいに思ってるんだろうな。


ぎくしゃくした空気のまま、みんなで教室に入った。掲示物が2か月前とはけっこう変わっていた。うちのクラスってこんなにおいだったかな?

机が6つ、真ん中に用意されていて、向き合うみたいなかたちにセッティングされていた。ほかの机はみんなうしろに寄せられていた。

あたしの机はどれだろう。席替えはしたのかな。