そう思ったとたん、ずっと閉じていたフタがパカッと開いたような感じがした。

急激に思い出す。学校に行っていたころのこと。“あっち側”にいたころの自分と、みんなのこと。

たった2か月くらい前のことなのにひどくなつかしい気持ちがした。でも同じくらい、いたたまれなかった。


「私は、祈がもう嫌だって言うなら、このまま学校をやめるのも選択肢だと思ってるよ」


おかーさんはとても優しい口調で言った。あたしいま相当ヒドイ顔をしているんだろうなって思った。


学校、やめてもいいって、あたしも思う。

これといってあそこでやりたいこともないし、学校にこだわる必要性を感じないから、なんの未練もないし。

それどころか、朝早く起きるのツライし、授業は退屈だし、テストもあるし、生徒指導はウルサイし、サユがくれたマニキュアだって爪に塗っていけないし。

あんまりにも不自由。嫌なことだらけ。あんなところやめちゃってもぜんぜん問題ないよ。


――本当に?


あたし、学校やめたら、なにするの? おじさんのところにいる? いつまで? ここでなにしてる? よもぎの散歩とゴハンの準備? 毎日? いつまで? 死ぬまで?

死ぬって、なんだ。じゃあ、あたしとおじさん、どっちが先に死ぬんだ。


考え始めると途方もなくなった。こわくなった。死ぬとか、バカみたいだけど、こわくてしょうがなくなった。



「行こう。面談」


突然、おじさんが言った。彼はいつの間にかうどんを食べ終えていた。