お弁当が半分ほどなくなったところで、ふと、スマホが震えた。サユからのLINEだった。
「ねえ、サユ、背泳ぎで8位入賞だって、県大会」
「へえ、すげえな」
「三宅は自由形優勝だってさ」
そういえば7月の頭に大会があるって言っていたね。なんの大会かはよく知らないけど、去年もこれくらいの時期にそういうのがあったっけなあ。
すごいな。サユも、三宅も。いいな。熱中できるものがあって、いいな。部活をがんばっているふたりのこと、素直にかっこいいって思うよ。
同時に、あの嫌な感じがぽこっと顔をだした。
なんともいえない不安な感じ。背中をじりじり責めたててくるような、気持ち悪い、焦りみたいなもの。
「……あたしは、このままでいいのかな」
思わず言葉に出してしまっていた。
おじさんとよもぎと過ごす毎日は、とても穏やかで、幸せで、夢みたいだよ。ずっとこの毎日が続いてほしいって思う。ずっと“こっち側”にいたいって思う。ぶっきらぼうで優しいおじさんの、傍にいたいって。
でもきっとそれは無理なんだろうなってこと、なんとなくわかる。
「あたしはいつまでここにいられる?」
言ってすぐに後悔した。
その日までのカウントダウンを、自分から始めてしまったような気がした。