帰宅するとすぐに夕食の準備をした。ずいぶん手際がよくなったなぁと我ながら思う。トマトと茄子の冷製パスタを、おじさんはきょうもウマイともマズイとも言わないで、黙って完食してくれた。

食後のココアは決まっておじさんがいれてくれる。ちょっと薄めの味がおじさんっぽくってすごく好きだなって思う。おいしいよ。


ソファにならんで座っていた。おじさんは冷たい麦茶を飲んでいた。誕生日におかーさんがくれたおそろいのグラス、おじさんは毎日使ってくれているね。

ふと、手元に置いていたスマホが震えた。三宅からのLINEの通知だった。2時間前にあたしが送ったのに対する返信だ。


「三宅、無事に帰宅したって。いままで爆睡してたって」

「そうか、よかったな」


おじさんは興味なさそうに声を出した。なんだか無性にくやしくなった。


「気にならないの?」


やばい、いまあたし、ものすごく子どもっぽいことを言おうとしてる。


「あたしが三宅となに話してたか、和志さんはまったく興味ないの?」


矛盾した気持ちが体のなかで渦巻いている。

三宅に好きだって言われたこと、おじさんには絶対知られたくないって思うのに、ほんとは知ってほしいって思ってる。心のどこかでなにかを期待してる。

もしかしたらやきもち妬いてくれるんじゃないかって。怒ってくれるんじゃないかって。


「べつに」


でも、おじさんはいつもの顔のまま、いつものトーンでそう言うだけだ。