病室に戻ると、まるであたしを待っていたかのようにおじさんとサユが立ち上がった。どうやら帰るってことみたい。
もう少しいたいような気もするけど、あんまり長居するのもおかーさんの体にさわるだろうし、そろそろ夕食どきだから、しょうがないね。
「三宅は?」
サユが訊ねた。あたしが一瞬だけ言葉に詰まると、サユはなにかを察したような顔をした。
「もしかして、ついに言われた?」
「なに……」
「好きだって。いーちゃん、三宅に言われた?」
やっぱり体育会系だなって思う。サユも、三宅も。思ったことすぐ口にする。こんなのは偏見なんだろうけど。
サユの表情は、すごく興味津々ってのと、すごく驚いたっての、半々くらい。でもそれは決しておもしろがっているようには見えなくて、あたしはどんな顔をしたらいいのかわからなかった。
「……あ! ごめん、ゆりちゃんたちのいる前でこんな話」
サユはもうあたしが三宅に告白されたってことを確信しているみたいだ。
「つい興奮しちゃって……。だって誰がどう見ても三宅はずっといーちゃんのこと好きだったよ。気付いてないのなんて当人どうしだけってくらいで」
「そんなんじゃないよ」
言い訳みたいにしゃべるサユの言葉を制するように、あたしは声を出した。自分でも意外なほどパキッとした声だった。
「三宅には、ちょっといろいろあったことを謝られただけ。ぜんぜんそういうんじゃない」
すごく嫌。三宅のまっすぐな気持ちを突き返すしかできなかったことも、いまこんな言い方しかできないことも、おじさんの前でこんな話をしてしまったことも。
すごくいらいらする。
「ごめん、いーちゃん、わたしの早とちりで」
サユが怯えたように言ったので、はっとした。
「……違うの。ごめん、怒ってるんじゃないよ、サユ」
サイテーだ。このもやもやをよりにもよってサユにぶつけてしまうなんて。