好き――とは、ちょっと違うかもしれない。
恋してるって感じじゃない。片想い、好き、ドキドキ、そういうんじゃない。これは、三宅が思っている『好き』とは、少し違う場所にある気持ちだと思う。
三宅はあたしの沈黙を肯定と受け取ったのか、とたんにむずかしい顔を浮かべた。
「あいつ、いくつなんだよ? ていうかそもそも親戚なんだろ? 血ィつながってんだろ? そんなの、苦しいだけなんじゃないのかよ」
ああ、そっか、親戚……。そういうことになっていたんだっけね。
「違うよ。あのひと、ほんとは親戚じゃない。おかーさんの知り合いで、血はつながってない」
「でもうんと年上なのに変わりはないんだろ?」
そうだよ。あたしが幼稚園児だったころ、おじさんはハタチそこそこで、成長して17歳になったいま、おじさんは32歳で。どうしたって埋まらない15年ぶんが、おじさんとあたしのあいだにはある。
でもそれがなんだっていうの。
「好きになるのに年齢とか関係ないよ」
まるで自分に言い聞かせているみたいだった。
「あるだろ」
「ないんだよ、アホ。ないって言えっ」
ほんとは関係あるって思ってるくせに。
こわくてもどかしくてしょうがないくせに。
だからずっと気持ちにフタをしていたくせに。
いますぐ15歳だけ年をとりたい。何度も思ったし、何度も夢に見た。でも、目が覚めるといつもあたしは17歳で、おじさんは32歳だった。
「中澤のことが好きだ。いままでぜんぜん気付かなかったけど、たぶんおれ、もうずっと前からおまえを好きだった」
三宅は痛いほど切ない顔をして言った。あんまりにも脈絡のない、突然すぎる告白だった。
「なあ、おれは、これから中澤と学校に通えるよ。いっしょに卒業だってできるし、そのあともずっと、同じように年をとっていける」
そんな当然のことを、あたしは胸が張り裂けそうな思いで聞いていた。