ドアが2回ノックされた。振り向くと、そこにはなぜか青ざめた顔のサユがいて、そのうしろに三宅もいた。びっくりした。どうしてふたりがここに?
「ゆりちゃん大丈夫なの!?」
メガホンを通したみたいなでっかい声。かわいい顔をしていてもサユはやっぱり体育会系だ。
「サユ、わざわざ来てくれたの。うわあ、ありがとうね」
おかーさんがわざとらしいくらい元気そうな調子で答えた。
「部活はきょうはお休みなの?」
「部活なんてしてる場合じゃないよ! ゆりちゃん、なんともないの? 大丈夫なの?」
「ダイジョーブダイジョーブ。なんか大げさな感じになっちゃったけど、ただの胃潰瘍だって。お騒がせしてごめんね」
よかったあ、と、サユが大きなため息をつく。そのうしろでそわそわしている三宅の存在をおかーさんがつっこむと、彼はおずおずこちらに出てきて、ぺこっと頭を下げた。
「あの……おれ、三宅純矢っていいます。中澤サンと同じクラスで……高瀬サンとは、水泳部でいっしょで。なんかくっついてきちゃってスミマセン」
わけを聞けば、まず病院からは学校に連絡がいったそうだ。そりゃふつうの女子高生なら学校にいる時間帯だし、それは当たり前の対応だ。
それで、事務のおじいちゃんから事情が担任に伝わり、担任は自宅に電話をかけたのだが不在、困って幼なじみのサユに状況を伝え、お見舞いのためにサユが部活を休もうとしていたところを三宅が問いただし、いまに至ると。
なるほど、わかったけど、さっぱりわからない。
「それで、どうして三宅が来る必要があるの」
率直に訊ねると、三宅はあからさまにしゅんとした。決して怒っているわけじゃないのにキツイ言い方になってしまった。
「だって……なんか、心配で。こないだのことも謝ってないし、なんとなく行かなきゃって思った。ごめん」
三宅ってアホだな。アホだけど、やっぱり、すごくいいやつだ。