「やっぱり祈、佐山くんのところに行ってからすごく変わったよね」

「そうかな」


否定するみたいに聞き返したけど、本当は自分でもわかっていた。


「こないだ、誕生日のときも思ったんだけどさ、祈は佐山くんのこと男の人として気になってるんじゃない?」

「えっ?」


突然なんてことを言いだすんだ、うちの母親は。こういうところはほんとに変わんないよ。


「祈くらいの年齢の女の子が年上の男性に憧れるのはめずらしくないことだよ。祈には父親がいないからなおさらなんだろうねえ。こうなること、この同居を決めたときからなんとなく予感してたけど……」


ぎゅうぎゅうに、必死でフタをしていた部分を、こんなにも簡単に暴かれてしまった。

同時にとてもおそろしい気がした。15も年上の男に惹かれているなんてきっとフツウじゃないことだもん。間違ったことだもん――たぶん。

おかーさんも怒るに決まってる。誰かに……サユや三宅、そしておじさんに知られでもしたら、気持ち悪がられるに決まっている。


「祈、そんな顔しないで」


でもおかーさんは笑った。へらりと、少女のように。


「佐山くんは昔からずっといい男だよ。祈は見る目があると思う。昔の部下が息子になるってのはけっこう複雑だけど、まあ佐山くんならいっかぁ」

「バカじゃないのっ。話が飛びすぎててワケわかんないよ……」


それに、まだあたし、肯定したわけじゃないのに。否定したところでこのひとの前では意味なさそうだけど。


「祈、絶対に好きな人と結ばれてね。なにがあってもおかーさんが味方でいる」


おかーさんは言った。おどけたような言い方だったけど、真剣に言っているのがわかるよ。なんだかとても泣きたいような気持ちになる言葉だ。