「いつもさみしい思いをさせてごめんね」


うん、さみしかった。ひとりで食べるごはんはおいしくなかったよ。

でも、おかーさんはあたしのために仕事をしてるんだってわかってたし、それ以外にもいろんなことすごくがんばってくれてるって伝わっていたから、我慢してた。あたしがワガママ言っちゃいけないって思ってたんだ。

ほんとは、さみしいって思うことじたいが間違いなんじゃないかって、ずっと不安だった。そんなことを思ってしまう自分が大嫌いだった。


おかーさんががんばればがんばるほど、それはあたしのせいなんじゃないかって、こわくてたまらなかったよ。


「全部、私の身勝手のせいで……ほんとにごめんね、祈」


でも、そんなに謝らないでほしいよ。

精いっぱいした自分の恋に、後悔はしないでいてほしいよ。


「カンペキな、母親じゃなくて、いいの」


かすれた声が出た。


「もっと、仕事のこととかいろいろ愚痴ったり、感情を出して理不尽に怒ったり、泣いたりしてくれていいの。

疲れてるならそう言ってほしい。クリスマスとかお正月とか、わざわざいろんなとこ連れてってくれなくていい。べつにいっしょに過ごせなくたっていいんだ。

ねえ、おかーさん、そんなにがんばらなくてもいいの。おかーさんは、仕事も、母親も、もっと休んでいいっ。大好きなひとと恋をしたこと、もっと誇っていいっ」


養ってもらっている分際でエラそうなこと言ってるのは重々承知。