誰かとくっついているときの安心感って、ほかのなににも代えられないと思う。

おじさんが抱き寄せてくれたときもそうだったけど、あのときとはちょっと違う感じだな。おかーさんはやっぱり特別なんだって実感するよ。血を分けた、たったひとりの肉親なんだって、こうしているだけでわかるんだ。

おかーさんに抱きしめられるのはいつぶりだろう。こんなふうに、甘えて泣きじゃくるのは、いつぶりだろう。


いつの間にかおじさんは病室から消えていた。彼なりに気を遣ってくれたんだと思う。



「誕生日の夜に父親のことを聞いてきたね」


ふと、おかーさんの声が落ちた。腕が緩んだので見上げると目が合った。きれいな顔が聖母のようにほほ笑んで、そっと頭を撫でてくれる。


「正直、面食らった。祈は父親なんかどうでもいいのかなってずっと思ってたから……。でも気にならないわけがないね? きっと私に気を遣ってくれてたんだよね、ごめんね」


何度も何度も、細い指があたしの頭の上を往復する。


「祈の父親は、高校時代、私の担任の先生だったひとなの」


全身に鳥肌が立った。

お父さん、先生だったんだ……。お父さんのことはほんとになんにも知らないから、なんだか物語を聞いてるみたいな気分だ。不思議な、複雑な気持ち。