プロフィール

乾為天女
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猫付き下宿・日向荘 やわらかな檻の中で、忘れられない恋を

総文字数/17,472

ヒューマンドラマ10ページ

第62回キャラクター短編小説コンテスト「心癒される、猫小説」エントリー中
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 失恋の傷を抱えたまま、新しい下宿へ引っ越してきた青年と、猫まみれの一軒家を切り盛りする管理人さん、そして四匹の猫たちとの、ゆっくり進む恋と再生の物語です。  舞台は「猫付き下宿・日向荘」。  玄関を開けた瞬間から、足元には猫、廊下にも猫、洗濯かごの中にも猫。そんな家にやって来た藤原悠誠は、押し入れの奥に「開けられない箱」を隠したまま、半分だけ息をひそめるように暮らし始めます。  日向荘の管理人・緑川翠は、明るく見えて、心のどこかに消えない後悔を抱えた女性です。  彼女が用意する温かいご飯と、おしゃべりと、さりげない気遣い。そして、ボス猫メンフィス、恋愛監督マリ、屋根の上が好きなラスムス、膝に飛び乗る専門のパイパー……四匹の猫たちが、それぞれのやり方で人間の心に寄り添います。  元恋人との思い出をしまい込んだ「箱」、前に働いていた場所で助けられなかった命の記憶、誰にも言えないまま胸につかえている後悔。  日向荘での暮らしの中で、二人は少しずつそれらと向き合い、「捨てる」でも「なかったことにする」でもない、ほどよい距離の取り方を探していきます。  大きな事件は起きませんが、猫たちが毎日少しずつ、空気を変えてくれます。  泣きたい夜にはそっと膝に乗り、迷っているときには箱の上で丸くなり、屋根の上から帰り道を見守る――そんな小さな出来事の積み重ねが、やがて「もう一度、誰かを好きになってもいいかもしれない」と思える力に変わっていきます。
明日の模様――ここは虚構?それとも現実

総文字数/15,750

ホラー10ページ

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 九月の夕凪が長い海辺の町・海架町。私たちは、町のPR用の“モキュメンタリー”を撮るために、カメラとマイクを抱えて浜を歩きはじめました。きっかけは、波打ち際で見つけた一片の流木――その木肌に刻まれた奇妙な模様と、録音機に紛れ込んだ「ここは虚構?それとも現実?」という、誰のものでもない囁きです。  やがて映像と現実のあいだに生まれる小さなズレは、町を困らせるのではなく、なぜか人を守る方向へ転がっていきます。濡れた足跡が雨への備えを促し、“まだ起きていない注意の声”が小さな事故を避けさせる。私たちは怖がらせる演出よりも、暮らしを守る誠実さを選び、被写体の合意とテロップでの明示というルールを自分たちに課しました。  流木の模様の正体が“祈りの図案”だったと知ったとき、虚構と現実は敵同士ではないと気づきます。だれかの善意が、現実をほんの少しだけやさしく上書きしてくれる。
言い訳しない恋と鏡橋――湊桜もののけ開港記

総文字数/125,398

和風ファンタジー60ページ

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港町・湊桜。商いのざわめきと潮の匂いが混じる夕まぐれ、鏡に棲むもののけが微笑みました。  言い訳を先に用意してから動く女・結花は、まっすぐすぎる言葉が苦手です。代わりに、無茶でユニークな手を思いつく。隣には、例え話が得意な男・光。彼は人の心に届く言葉を、いつも一歩だけ遅れて渡してくれる。二人が踏み出す先に、〈人と妖〉を分けてきた境目と、まだ誰も渡ったことのない“鏡橋”がありました。  欠片を集めれば集めるほど、結花は自分が逃げていた本音に追い込まれます。傷だらけの仲間、泣かない修験者、自由に踊る芸者、誇り高い巫女、鍛冶場で火花を散らす弟子、計画を束ねる番頭、帳簿で世を動かす書役――そして、異国から来た二人の旅人。誰もが「守りたいもの」の形を胸に抱え、鏡の向こうの王女と向き合う夜が来る。  潮が満ち、太鼓が鳴り、雅楽が空気を震わせるとき、結花は言い訳を脱ぎ捨てます。恋に名を与え、仲間に背中を預け、恐れと手を結ぶ。鏡橋は、境目ではなく“橋”になる――そう信じて。

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