あと2.3日で外出出来るある日。


面会時間が終わろうとしていてあたしはコートを着た。


「ハル、お母さんが寝るまでいてもらってもいい?」


歯磨きをしながら母はあたしに言った。


「え?いいけど、どうしたの?」


「別に何となく」


あたしはコートを脱いで椅子に座った。


歯磨きを終えた母はまたエコー写真をみている。


「ソラマメちゃん?」


「そう。ソラマメちゃん」とニッコリ笑った。



写真を見ながら母は少し黙ってからポツリと呟いた。


「ウチの家族は強い家族なの」


「え?」


「ウチの家族は優しくて強い家族だから泣かないの」


あたしを見て微笑んだ。


その言葉で本当は泣きそうになったけど我慢した。


「泣かないよ。泣く理由ないでしょ?お母さんも強いから泣かないじゃん」


「そう。ウチの家族は泣かないんだよ、ハル」


手を握られた。


「どんな事があっても泣かない家族なんだから」


「うん」


あたしも母に笑いかけた。


それしか出来なかった。泣かない家族だから。笑う事しか出来ない家族だから・・・。