母の部屋であたしと兄は久し振りにどうでもいい世間話をしていた。
母も一緒に笑っていたけど、面会時間が過ぎる頃には
「あんた達うるさいからもう帰りなさい」
と言われて2人で病室を出た。
10月も半ばでかなり冷え込んでいる外で2人でタバコを吸った。
「どうなの?あるの?病院」
あたしが聞くと、ため息と煙を一緒に吐いた。
「病院はあるけど、母さんもう歩けないし車椅子に乗れないじゃん。ダメなんだよ、原則として最低でも車椅子に乗れなきゃ通えない」
「本人には何て言ってるの?」
「車椅子に乗れないと通えないから頑張って体力つけて車椅子の練習しようって言ってある。それからは1日10分くらい座る練習をしているよ」
「あぁ、たまに座ろうとするのはそれなんだ」
あたしはここ最近疑問に思ってる事を兄に聞いた。
「もしかしてお母さんって助からない?」
兄はあたしを見て笑ってからあたしの頭をバシっと叩いた。
「んなワケねーだろ、何言ってんの?お前」
それでもあたしの疑惑は消えなかった。