「手術・・・出来ますか?」


あたしの質問に医者は難しい顔をした。

しばらくの沈黙、あたしは母の手をずっと握っていた。


「これだけ腹部に散っていると取り除く事は出来ません。臓器が全部なくなってしまう」


「だったらどうするんですか?」


「抗がん剤を打ちます。そして肝臓の入り口、胆管と言いますがこの部分が潰されてて胆汁が出せない状態になっています。どうにか潰れていない部分を見つけて管を通して胆汁を外に出します。それだけでも状態はかなり変わります。抗がん剤治療と一緒に胆汁を出すちょっとしたオペはやろうと思います」


(手術出来ないってそんな事あってもいいの?)


今、ここで医者に食ってかかっても無意味だ。


このお腹に広がったガンは結局また抗がん剤。

せっかく髪の毛が生えたのにまた抜けてしまう。


肝臓の中の胆汁を出さないと命の危険がある事はわかった。

潰れていない場所を探して一刻も早く処置をしてほしい。


「わかりました。間もなく父が来るのでもう一度同じ説明をして下さい。お母さん、質問ある?」


母を見ると力なく首を振った。


「ではご主人に説明をしている間にMRを撮ろうかな?○○さん大丈夫?」


母は黙って頷いた。