ガン患者の母を尊重して家事を手伝うべきなんだろうけど、あたしはとにかく病気が怖かった。


寝たら目が覚めないんじゃないかって思ったり、ちょっと買い物に出ても倒れたらどうしようって思ってろくに楽しめなかった。


彼氏に「怖い」と気持ちを打ち明けても、


「今まで何かわからないで『頭がおかしくなった、こんなの自分じゃない』って悩んでたんだからわかってよかったって前向きに考えなよ」


と言われ益々イライラして八つ当たりに様に怒鳴りつけた。


「自分の彼女が死んじゃうかもしれないんだよ?それでもそんな平常心でいられるのがわかんないよ!あたしの身体だもんね、自分じゃないからそんな風に言えるんだよ!!」


「オレだってどうしていいかわかんないよ!でも、ハルが不安だからオレがしっかりしなきゃいけないじゃん。こっちの身にもなれよ、突然彼女が死ぬかもしれないって言われて、ストレスかけるなってどうすればいいんだよ!」


「そうやって怒鳴られるのがストレスなんだって!」


「じゃあ黙ってハルのワガママ聞いてればストレスにならないわけ?そんな事したらオレが頭おかしくなるよ」



その日、あたしは彼氏の家で発作で倒れた。


仕事に出て行くのをベッドの中で見送って、昼頃に洗濯をしていた。

洗濯物を干したところまでは記憶にある。


気が付いたら夕方になっていた。


(とりあえず生きてたか・・・)


この気分と発作を一生繰り返す事になる。


『発作で倒れてたみたいだから夕食作れない』


彼氏にメールを入れてベッドに横になった。


すっ飛んで帰ってきた彼氏はあたしの頭を撫でながら「ごめん」と言った。


喧嘩の度に発作を起こしたらあたしはすぐに死んでしまうかもしれないって思った。