母とあたしは喧嘩ばかりしていたけど、親子仲はいい方だと思う。


「眉毛がダサイ」とあたしは母の眉毛を整えていたし、2人で近くの温泉や買い物にもよく行った。


あたしは手のかかるガキだったけど、ヤンキーにもギャルにもならなかった。

それは余計厄介だとも言える。


我が家は結構厳しい家庭だったと思う。

父は仕事が忙しく、滅多に顔を合わす事はなかったけど母は何より父を敬う様に育てた。

あたしや兄には門限があり、兄はバイトなんかさせてもらえず部活に励んでいた。

一方で金のかかる娘のあたしには高校入学と同時に「バイトしろ」と言った。

バイトもしないで遊びほうけるよりバイトをびっちりとしてくれた方がいいと思ったみたいだ。

兄は比較的、門限も守り母と揉める事はあまりなかった。

あたしは門限破りの常習犯だった。

高校生の頃は飲みにばっかり出ていた。

その頃からいまでもお酒が好きなのは変わらない。


我が家の鉄の掟。


『大晦日と元旦は外へ出てはいけない』


何故かあたし達兄妹はこれだけは守り続けた。


あたしは父が大好きだった。母よりも父が好きだった。

大人になってからはどちらも変わらず好きだけど、父はあたしに優しかった。

タバコで叱られても「外で吸わない様に」。

これは中学からタバコを吸っていた兄にも、あたしにも言っていた。

自分も「良い子」ではなかったらしく気持ちがわかるから。


大事な事は母に相談してから父に決めてもらう。


これも決まりだった。

父は子供の気持ちを考えてから、結構好きな道へ進ませてくれた。


忙しい父とまともに過ごせるのはお正月だけだったから、外へは出ないという決まりだった。

それには反発せず、あたしは今も大晦日と元旦は外へは出ない。