ガンがキッカケで母は禁煙した。
免疫力が弱い母の前ではみんなタバコを吸わなくなり部屋で吸うようになった。
ある日の夜中、トイレか水を飲みにか忘れたけど1階へ降りたら台所の換気扇に気配を感じた。
そっと覗いてみると、ツルツル頭の何かが座っていて悲鳴を上げそうになった。
「あぁ、ハル。どうかしたの?」
ツルツル頭は母で振り返りあたしに声を掛けた。
「どうしたって・・・何してんの?寝れないの?」
「まぁね・・・」
と言いながら煙を吐いていた。
「あのさ、みんなお母さんの身体の為にタバコ気をつけてるんだけど」
あたしが呆れると自嘲気味に笑って「たまにはいいでしょ」と言った。
あたしは自分の部屋に戻ってタバコを持ってくると「はい」と渡した。
そして自分の火を点けて一緒に吸った。
「メンソール嫌いなんだよね」
「文句ばっかり・・・わかったよ、買ってくるからたまには吸えば?」
苦しいし身体は思う様に動かないんだからストレスは溜ると思う。
だからタバコを隠れてこっそり吸うくらいは免疫がどうとかの前にいいだろうと思った。
抗がん剤を打ってないあたし達にはわからない苦しみ。
でも、それはガンを取り除く為に必要なものだ。
わかっているけど、弱っていく親を見るのは正直辛かった。