「あのさ、兄ちゃんの結婚式で兄ちゃんと腕組んでる写真あるじゃん、それ飾りたいんだけど・・・結婚式の写真がない」


兄は呆れた顔で言った。


「お前バカだよな?母さんはそういう大事なものはタンスの奥にしまっておくんだよ」


母の部屋に行ってしばらくガサゴソとした後に箱を持ってきて


「な?大事だからキチンと箱にしまってある」


と言って箱を開けると兄の結婚式の写真がいっぱい出てきた。


あたしは写真を見ながら目的の写真を探した。


「あった、これ探してたの」


見せると父が「ハル、その写真ちょっと待て」と言った。


「え?」あたしから写真を取り上げるとマジマジと写真を見て


「これ、オレが好きなあの人の笑顔。この写真にあった」


写真はサプライズで新郎の衣装替えの時に腕を組んで付き添いをするといった時の写真で着物を着た母が照れ笑いのように穏やかに微笑んでいる。


「これにする。遺影の写真、これでいいよな?」


あたし、兄夫婦に聞いて「いいんじゃない?」というと父は「良かった、気に入らない写真ばっかりで妥協するところだった」とホッとした。