それからどうやって家に帰ってきたかはよく覚えてない。
死後処置をした母はくるまれてストレッチャーで運ばれて行った。
「お前、自分で運転出来るか?大丈夫か?」
兄に言われた気がしたけど多分「大丈夫」って答えた。
帰りがけに母の友人の家によって母の写真をもらった。
遺影に使うかもしれないから。
それから家に帰ると、もう祭壇はセットされていて母が横たわっていた。
斎場の女性スタッフに「お母さんのメイク道具はどこですか?」と聞かれて、化粧をほとんどしない母のメイク道具を出した。
「お嬢さんが化粧してあげて下さい。明後日湯棺をした後ももう一度メイクをしてあげて下さい」
「あたしがするんですか?」
「生前に近い形でメイクできるのはお嬢さんだけですから。皆さんそうですよ」
「・・・わかりました」
布団に横たわっている母の頭の上に座って布を外した。
母の顔は少し笑っているように見えた。
家に帰りたくても帰れなかったから2日家に安置する事に決まった。