「ハル!」


誰かに呼ばれて我に返るけど誰に呼ばれたかわからない。

わかっている事は兄は朝のラッシュに捕まってなかなか病院に辿り着けない事だ。


「ハル!お母さんの手を握ってやれ!」


あぁ呼んだのは叔父だったのか。


「娘さん。お母さんの手握ってあげよう。お兄さんがくるまで握って待っててあげよう」


看護士さんが優しく肩を押してくれた。


父が握ってる左手じゃなくて右手の方に向かうと、すぐ下の叔母が母の手を離さないで怒られてた。


「ハルは娘なんだからハルに握らせてやれ!ノブもその方がいい!」


「ヤダ!!」叔母は泣き叫んだ。


「お嬢さんは家族です!!お嬢さんに手を握らせてあげて下さい!」


看護士が一喝して叔母が手を離した。


母の手をそっと握った。

みんなが手を温めてくれているから冷たくはなかった。


「お母さん?」呼んでもやっぱり返事はない。