力が全くない母の手を握って放心している間にも叔父は「ノブ!」と叫び続けた。
すぐ下の叔母が駆けつけて「信子姉ちゃん!?」と叫んだ。
あたしは叔母に吹っ飛ばされて壁にもたれる様にして口元を手で押さえた。
涙は出るのに言葉は出ない。
父が入ってきて「ちょっと、何だって!?」とビックリして叔母をよけて母の手を握った。
叔母が泣き叫んでいた。
叔父がもう片方の手を叔母に握らせると叔母に言った。
「ユウヤに冷たくなった手を触らせたくないからこすって温めろ!」
叔母にはそんな余裕がないから叔父が代わって母の手をこすったり息を吹きかけている。
次々に母の妹といつもきてくれるおばさんが来て、父が握ってない方の手を掴んで呼びかけて手をこすっている。
(ウソでしょ・・・?)
あたしはまだ口に手を当てたままその光景を見ていた。
(お母さん・・・死んだ・・・?)
みんなも泣いてるし母は動かないし、そしてあたしの目からはボロボロと涙が出て「現実」だって思い知らされる。
看取ったのはあたしなんだから現実なのは当たり前だ。