あたしの右手の薬指には18金の分厚くて太い指輪をしている。
母の余命を言われた後、父とテレビを見ている時に
「ハル、ちょっと」
と言われて貴重品が入っている金庫の鍵を開けて小さなアクセサリー用の巾着から指輪を出した。
「これ、はめてみろ」
分厚い指輪を出されてよくわからないまま右手の薬指にはめた。
左手の薬指には彼氏にクリスマスにもらった指輪をしていたから。
「入るけど少し大きいかな?でも大丈夫だよ。これ何?」
指輪を返そうとすると「そのままはめとけ」と言われた。
「それはお袋・・・お前のばあちゃんがお母さんにあげた指輪だ。する機会がないってしてなかったけどお前にやる。お母さんのだからずっと外さないでしてろ」
「お母さんのなの?」
「そう。お母さんのものは全て娘のお前のものだ。オレのものはユウヤに行くだろうけど。指輪もブランドのバッグも着物の全部お前のだから。お母さんもユウヤの嫁さんには悪いけど娘がいるから全てお前のものだって言ってたから」
だからあたしはずーっと指輪を外した事がない。