ウトウトと眠りながら父の声が聞こえる。
「・・・わかるけど、マスク取ったらアンタ、息出来なくなっちゃうんだよ?生きるためにはそれしてないと・・・」
「水?口に含むだけしか飲めないよ?いい?」
「頑張れとは言わないけど無理しないで目を閉じてみなさいよ、起こしてあげるから。ハルも寝てるよ?」
「大丈夫。目を閉じても死なない。死なせないから。必ず起こすから寝ないと体力戻らないよ?治療できなくなるから目を閉じて」
・・・父はこんなに優しいんだ。
父があのメモを見て真っ赤な目で戻ってきた時にあたしと兄に言った。
「知らなかった。自分があの人をすごく愛していて、あの人ほど最高にいい女はこの世に存在しない。それを痛感しててもっと夫婦で過ごしたかった」
仕事で忙しかった父に育児を頼んだ事はなかった。
実は父はもう1人子供がほしかったらしい。
でも、母は母らしい言い方で「最初に男の子がほしいって言ったから産んだでしょ?次は女の子がいいってで女の子。後はオカマしか残ってないから産まない」と言ったらしい。
母っぽい言い方だなと思った。