「今のうちに飯買ってくるわ」


夜になって母の暴れるのが少しおさまった隙を見て父が買い出しに行った。


母がマスクを触らない様に両手を握りながらあたしは母に色々聞いた。


「苦しいよね?」頷いた。


「寝たくないんだよね?寝るのが怖いんだよね?」これにも頷いた。



あれほど泣かないって約束してたのにあたしの目からは涙が出てきた。


「ごめんね、苦しいのに代わってあげる事も出来ない。代わってあげたいよ」


あたしの顔をジッと見てから首を振った。


「え?どういう事?」


驚いて聞くと、酸素マスクからポツリポツリと言葉が出る。


「苦しい、でも、ハルと、代われない、ハル、可哀想」



やっぱり親なんだ・・・


自分が苦しいのに娘には代わってもらいたくないんだ・・・


あたしの母は強い人。


そして誰よりも家族を大事にする人。