「お母さん?」
あたしが声をかけると腕を力強く掴まれる。
眉間に皺を寄せて胸で息をしながら必死に何かを訴えてくる。
「酸素マスクでしょ?でもそれしてないと息が苦しいからちょっと我慢してね?息が楽になったらまた鼻の酸素にすぐ変えてもらうから」
あたしからを離すと自分でマスクを取ろうとした。
それを慌てて止める。
「お父さん、1人で見るのは無理じゃない?あたしも一緒にいるよ」
「そうだな、これは1人じゃ無理だ。目を離す事さえ出来ない」
明日は一番下の叔母が付き添いする事になっている。
もう帰ろうとしている兄を引き止めて明日は叔母と2人で付き添いしてほしいと伝えると「わかった」と頷いた。
病室に戻ろうとするあたしに「ハル」と声を掛けてきた。
「何かあったら電話して。すぐ出るから。後・・・泣くなよ」
「何で泣くの?バカじゃないの?泣くワケないじゃん」
「ちょっとお前の精神限界かなって思っただけ。泣かないからどっか神経飛んでるって思っただけだから」
兄がバイバイと手を振って病院から出て行った。