母の外出は無理になった。


11月の半ばの事だ。


尿が出なくなったから。


尿が出ないという事は確実に「死」へ近付いている事になる。


母に伝えてなかったからよかったけど、あたし達は落胆した。


いよいよ近付いてきている。


目を背けたくてもあたし達の気持ちをよそに忍び足でそれはやってきた。


尿さえ正常に出てくれれば「希望」が見える。


一時的なものであってほしかった。


だから全員尿の所ばかり見て確認していた。



「何見てるの?」


母に言われて「見てないよ。鶴折ってるだけ」と笑って誤摩化した。



叔父や叔母が来る様になってやっぱり千羽鶴を折るのにハマっていた。


叔父の所の子供は折り紙を持ち帰り夜遅くまで鶴を折ってくれていた。


それでもまだ千羽まで到達していない。