「そんな事、この状態で出来るんですか?」



「・・・かなりリスクはある。もしかすると余命が短くなる可能性もある。でもね、私が娘さんの立場だったら家に帰してあげたい。看護士の私が言うのもおかしいけど、お母さんもう二度と家には帰れない。だったらリスクを背負っても私ならもう一度わかる状態の時に家に帰らせてあげたいの。お母さんも家に帰りたいって言ってたよ?」



「・・・帰してあげたい。あたしもそう思うけど・・・」



「私達に不信感を持ってるのは知ってる。でも、同じ女として、母と娘っていう親子として娘さんがどう思ってるかを医学的じゃなくて感情論で聞きたかったの」


兄が言っていた。


外出で家に帰ってきた帰りの車の中で母は泣いていたと。

自分でもう二度と家には帰れないんじゃないかって思ったんだと思うって。



「帰したい。一緒に帰りたい、こんな暗い場所で死を待つよりもう一度無理にでも家に連れて帰りたい。まだ帰れるんだって希望を持ってもらいたい」


涙が出てきた。

悲しいんじゃなくて悔しくて。


看護士はあたしの肩に手を置いて頷いた。


「お母さん、帰してあげよう」


あたしは泣きながら頷いた。