そんな中、書道をずっと習っていたあたしは規定の師範検定に受かった。

書道の師範になるのは子供の頃からの夢の一つだった。


それを伝えると、母はあたしの手をしっかり握りながら


「よかったね、本当によかったね」


と少し涙ぐみながら言った。


「ありがとう」と言うと何度も頷いていた。


学生の頃から母と衝突してばかり、何でも中途半端。

そんなあたしがちゃんと形として残るものを出来たから少しだけ親孝行を出来たのかもしれない。


相当嬉しかったみたいで母は看護士にまで言っていた。


「娘さん、お習字の先生なんだって?」


と聞かれてビックリした事がある。


「まぁ・・・まだ新米ですけど」


何だか恥ずかしくてそう答えた記憶がある。


「○○さんのご家族はいつも笑顔でいいわねって言ってるのよ」


それも言われて「そうですね」と答えた。


あたし達は泣くワケにはいかないから。そう言ったらどう思うだろうか?