弱ってはいたけど、母はいつも何か喋っていた。


それは老人の様に聞き取りにくかったけど、あたしは笑顔で


「そうなんだ」


を繰り返していた。


病室の静けさが嫌でポータブルのスピーカーを持っていってIPODに繋いで音楽をかけたりしてみた。


「たまにはいいでしょ?」


と言うと、


「いいね」


と母は笑顔で答えた。


母の点滴をふと見るとモルヒネが投与されていた。

モルヒネは痛みを緩和する麻薬の様なものだ。

末期ガンの患者には必ずと言っていいほど使われている。


モルヒネを点滴すると常にボーっとした感覚になり、ウトウトしているかハッキリと喋れなくなる。


でも痛みという苦しみがないから、最終手段で投与される。


内科医がいつも来ていたのに気が付くとプレートに「緩和ケア」と書いた女医さんが来る様になっていた。


緩和、苦しみなく逝けるまでの担当医・・・。


まだあたし達は諦めてないのに・・・。