あっという間に夕方になり病院へ戻る時間になった。
「もう病院に戻るのか・・・」
母はガッカリした顔をした。
「また外出許可を取ってみるよ。元気なんだから大丈夫、すぐにまた帰れるからさ」
あたしは笑顔で母を見送った。
帰りも兄が介護タクシーに乗り、父が車で後を追って病院へ戻った。
(また帰れるか・・・)
洗い物をしながらそれはもう出来ないかもしれないと思った。
免疫療法は全て断れた。
セカンド・オピニオンも無理だった。
あたし達は母をあの病院から救い出す事が出来ないでいた。
もう治療がしようのない母は「その時」をただ待つだけの状態になっていた。
後は生命力に賭けるしかないけど・・・。
あたし達もまだ諦めるわけにはいかない。
でもこの外出の後、母の容態はどんどん悪くなっていった。