そういえば親友と喧嘩したの、いや怒らしちまったの、サッカーが原因だったなぁ。
俺がボケーッとしてたもんだから負けちまって…、あんま思い出したくもないけど。
親友にはもう入れねぇって言われちまったし。
……そりゃそうか、オウンゴールとかしちまったしな。
苦い新着メモリーだ。
1996年に戻っても、仮にあいつが許してくれても、サッカーとは疎遠になりそうだ。
「そらぁっ!」
サッカーボールを反対側のグランドへ蹴る。
飛距離は相変わらずだったけど、グランドから出ちまった。
そのボールはリーマンの座るベンチ付近へ。
まっず、やっちまった。
慌ててボールを追い駆ける俺は、缶珈琲を啜っているリーマンにごめんなさいと謝罪した。
リーマンは「ん?」足元のボールを拾って、俺に視線を流してきた。
優しい人で、「坊主のか?」投げ渡してくる。
ありがとうございます、ボールを受け取った俺は軽く頭を下げた。
そのまま退散するつもりだったんだけど、
「坊主。こんなところでひとり、サッカーなんて寂しいだろ? 学校は? 見たところ、中学生のようだけど」
気さくに話し掛けられて、足を止めてしまう。
2011年に来て初めて秋本以外の人間と会話する瞬間だった。
「んー」俺はボールに目を落として、学校には行けていないんだと返事。
だから此処で暇を潰していた、肩を竦めて微苦笑を零す。
ワケありなのだと察してくれたリーマンは、「そっか」軽く相槌。
「俺も小学校低学年は不登校だったからな」
なんて簡単に身の上を暴露してくれたリーマンは、自分もサッカーが大好きだったのだと一笑を向けた。
「昔はサッカー選手になるとか夢見て、がむしゃらにボールを追ってた時代もあったんだぜ。まったく、なあんで今、営業マンなんてしてるんだかな」
いや、俺に愚痴られても困るんだけど。