2011年って楽しいことバッカじゃないよな。

こういった物寂しい光景も目の当たりにするんだよな…、んーっ、侘しい気持ちになる。


感傷に浸るのもほどほどに、俺はブランコのひとつを陣取って昼食を取る。

ひとりで食べるのもこれまた味気ないものだけど、2011年のコンビニの美味さでテンションを上げることにしよう。

大好きなあんぱんは最後に取っておいて、先にチーズパンを食らう。

やっぱ美味いな。
味も食感も文句なし。


まあ、パン屋には負けるけどさ。


咀嚼を繰り返して嚥下、牛乳で胃に流し込んで、食事を進めていた俺は、お待ちかねのあんぱんに手を伸ばそうとして動きを止めた。

茂みにサッカーボールが転がっている。

キャラクターの絵柄が印刷されているサッカーボールは、きっと子供用なんだろうな。

雨風に打たれて放置されていたのか、やけに色がくすんでいる。


「ラッキー」


俺はあんぱんをさっさと食べてしまい、牛乳で流し込んで食事を半強制終了させると、軽快な足取りで茂みに駆け寄った。

掻き分けるようにそれを手に取って、ブランコに戻る。


よしよし、空気は入ってるみたいだな。

どれ、ちょっと。

サッカーを地面に落として、俺は軽く爪先で小突く。
久々の感触に笑みが零れた。


俺、特別スポーツ系ってわけでもなかったけど、サッカーや野球をしたりすることは大好きだったんだ。

通学鞄をブランコの上に放置して、俺はグランドに向かう一人でサッカーなんてツマンナイって思うかもしれないけど、意外とボールを追い駆けるのって楽しいんだぞ。

十二分に体を動かせるからストレス発散できるし。秋本も体を動かしてストレス発散すりゃあいいのにな。


「あらよっと」


ボールを蹴り上げて、膝で受け止める。
 
ぽんっと宙を舞うサッカーボールを蹴って壁にシュート。

子供用だから飛距離は伸びなかったけど、それなりに快感を感じる。


清々しい気分になった。

夢中でボールを追い駆けていた俺だけど、ふっと脳裏にあの日の出来事が蘇って自嘲。