ゴンッ―!
頭をぶつけたのはこの直後。チェーンの存在を忘れていたみたいだ。
半開きの扉に激突していた。
「この扉」
舐めてるの?
無機質の金属扉に足蹴り(可哀想に、扉に罪はないだろうに)。
チェーンを荒々しく外す秋本は今度行ってきますと出て行った。
あれでも一端の教師をしてるんだから信じられないよな。
俺は軽く欠伸を噛み締めて踵返した。
さてと、朝食を食べ終わったら布団でも干すか。
俺が15年後の世界に来て、早10日が経った。
10日間、何があるわけでもなく平和な日常が流れている。
おかげで俺は10日の間で、居候なりの役割を見つけることが出来た。
それは家事、外に出られない俺が秋本にできる唯一のお礼だ。
そりゃ1日目こそやったこともない洗濯、不慣れな掃除に手間取ったけど、3日ありゃ仕事にも慣れてくる。
本来なら学校に通っている時間も、俺は主婦(あ。ちっげぇ主夫だ)のように家事に勤しんで日々を過ごしていた。
ぶっちゃけ、つまんねぇと言えばつまんねぇけど、教師としてハードな一日の仕事を終えて帰宅する秋本を考えると、風呂くらい焚いてやりたいって思うじゃんか。
居候している身分だしな。
朝食を食べ終わった俺は、洗濯機に汚れ物を入れ込んでセット。
その間、秋本の敷布団と客用の敷布団をベランダに干して掃除を開始。
洗濯が終わったら、それを干して(一日目こそ女物の下着を干すことに抵抗があったけどもう慣れた。慣れって怖いな)、溜まっていた食器を洗って一休み。
カフェオレを作って一息入れながら、お昼のワイドショーを見ることにした。
「あー疲れた。もうすぐお昼か。時間経つの早いな」
やれやれと凝った肩を揉み解して、俺は小さく伸びをした。
小学校の頃、若かりし俺は学校に行っている間、母さんは何してるんだろう?
家でごろごろできていいよなぁとか思ってたいたけど、家事って結構重労働なんだな。マジいい運動になるぜ。