秋本が連れ出してくれたのは、大型のショッピングモール。
人の密集度・行き交いが多い尚且つ、あまり人目を気にしなくて良い大型モールなら俺を連れて来ても大丈夫だと思ったんだって。
俺的には人が多いほど危険度は増すと思うんだけど、「今の現代人は冷たいのよ」なにせ自分さえ良ければどうでもいいって人が多いから、と秋本。
人が密集しているほどその傾向は強いらしい。
秋本が大丈夫と言うのなら、多分大丈夫だろう。
俺は人知れず胸を撫で下ろした。
平日でもショッピングモール内は客で賑わっていた。
人の多さに流されそうになりながら、俺は秋本の隣を歩く。
だけどすぐに興味が店々いっちまうもんだから、その度にはぐれそうになった。
よってその都度、少しは落ち着きなさいと秋本に叱られた。
教師らしく叱ってくるもんだから、なんだか教師と二人で買い物に来てる気分になった(実際そうなるんだよな)。
ごめんごめん、片手を出す俺に微苦笑を零す秋本は仕方が無さそうに許してくれる。
「うわ、あそこにゲーセンがある。今のゲーセンってどんな…、え、ちょ、秋本?」
でも、あんまり俺が落ち着きがないもんだから、強硬手段を取ってきた。
「買い物しに来たんでしょ」
しっかりと俺の手を握って、そのまま歩き出す彼女。
長い足で早く歩くもんだから、俺は駆け足になる。
「な、なあ。秋本、ちゃんとついて来るから…、手、放してくれないか?」
「嫌よ。あんたを放っておくと日が暮れる。リード代わりとして、しっかり握っとくわ」
んなこと言われても、これじゃあ…、なあ。
空いた手でぽりぽりと鼻の頭を掻く俺は彼女と肩を並べて、視線を床に落とす。
一応、お前に好意を寄せていた男なんだから、こういうことされると、あれだあれ。
期待しちまうというかなんというか…、いや、ないってことはハナッから分かってるんだけどさ。
なにせ今の俺とお前じゃ15の歳の差があるんだから。