「秋本、サンキュな」
沢山の感謝を彼女にぶつける。
言いたいことは山のようにあるけれど、今は飾りっ気のない素直な気持ちを彼女に伝えたかった。
だって彼女がいなかったら今頃、俺は本当の意味で自暴自棄になっていたに違いないんだから。
視線を前に戻して、「俺さ」お前のこと好きになって良かった、目尻を下げる。
これも本当の気持ちだ。
「俺、お前のそういうところ好きでさ。惚れたんだよな。暴力的なところは頂けなかったけど」
「馬鹿ね」髪を乾かす手がちょっと荒っぽくなった。
照れてるのか、呆れてるのか、今の俺には分からない。
「あんたってホンット昔から、そうやって馬鹿の一つ覚えのように自分の気持ちを投げてくるのよね。素直なんだか、純粋なんだか、何なんだか。
本当に女を口説きたいのか、疑問に思うほど場所問わず、尚且つ下心なしに自分の気持ちを伝えてきてたわよね。
―…あんたほど熱心に好きって言う奴いなかったわよ」
「馬鹿でごめんって。自覚はあるから。
でもさ、有りの儘に気持ち、知っておいて欲しかったんだ。着飾っても気持ち、伝わらないと思って」
その暴力的なところも、ひっくるめて俺はお前のことを好きになったんだぞ。カッコ失恋しちまったけどカッコ閉じる。
なーんてカッコつけてみる。
勿論、カッコの部分は心中で呟いたけどな。
「ほんとばか」秋本に毒づかれて、なんだか妙にくすぐったいお気持ちに駆られる。俺、結構恥ずかしい奴なのかもな。
「良い思い出にはなりそうだよ。好きな女の家で世話焼いてもらえるんだから。…まあ、相手はアラサーだけッ、イデデデデ!」