「落ち着いたらさ、いつかまた家族旅行に行けたらいいな。兄貴」
「な?」同意を求めると、「熱でもあるのか?」気持ち悪いと兄貴に一蹴される。
「ひでぇ、俺の真摯な気持ちを伝えたのに!」
ぶう垂れる俺に熱があるなら寝とけと嫌味を飛ばされる。
分かっている、兄貴の照れ隠しなんだってことは。
親が仲良くしてくれる、それは俺や兄貴にとってとても嬉しいことだ。
息子達にとっての一番の願いは、両親が仲良くしてくれること。
今は兄貴も、親に心を閉ざしちまってるだろうけど…、だけど、それは愛情の裏返しだから。
そりゃあぎこちなかったよ。
四人で食卓に着いている時の、あの気まずさと言ったら。
あからさま俺に話し掛けるなオーラを親に放っていたんだ。
親の当事者も弟の傍観者も気まずい。
それでも兄貴って基本的に家族思いだから、片隅では親の事を気にしているんじゃないかな。
15年後の未来では親を拒絶していたけれど、きっと15年後の兄貴も気にしていたに違いない。
絶縁だってできただろうに、兄貴は敢えてそこまではしなかった。
顔は度々見せていたみたいだし。
俺には分かるんだ、誰でもない兄貴の弟だからさ。