こうして俺は無事に家に帰れることになったんだけど、此処暫く家に引き篭もっている。
学校に行きたいけど、まだ両親が許してくれなさそうだ。
現実って厳しいな。
この調子じゃ学校に行くのも一苦労するだろう。
教室に馴染める時間も要しそうだし。
これも多くの人を傷付け、心配掛けさせた罰なのかもしれないな。
許可も下りないまま、俺は母さんと昼食を取り、平日の午後を過ごす。
何をしていたかというと、専ら部屋で勉強だ。
学校で授業を受けているであろう、同級生達に追いつくために。
んー、それにしても未だに俺は1996年の世界に戻って来たという実感が湧かない。
確かに父さんの持っている通信器具はPHSだし、我が家にあるテレビはブラウン管だし、スマートフォンなんて単語、テレビではちっとも聞かないけど。
それにしても実感が湧かない。俺が今1996年の空気を吸って、この世界で生きているなんて。
だけど俺は確かに2011年にいた。いたんだ。
引き出しを開ける。
中から取り出したのはあの時、彼女に買ってもらったキャップ帽と、仲直りした際に返してもらったCD。
キャップ帽も当然なんだけど、驚くことに遠藤から返してもらったCDも俺の手元にある。
2011年の遠藤から返してもらったCDが此処にあるということは、1996年の遠藤の手元にあるであろうCDはどうなるんだろうな。
よくわっかんねぇけど、これも2011年を忘れないでくれってメッセージなのかもしれない。
俺は宝物としてそれらを大事に引き出しに仕舞う。
数学の教科書と睨めっこしていると、「おい」の声と共に襖が開かれた。