だけど、その気遣いにちょっと哀愁が漂っている。

申し訳なさで一杯になった俺は、二人を驚かせることで気持ちを紛らわしてもらうことにした。


「なあ遠藤。姿見あるか?」
  
 
ジャケットを着る遠藤に質問。

「姿見?」寝室にあるけど、そう答えてくれる親友に借りるからと断りを入れた。


キョトン顔を作っている親友と同級生を置いて寝室に向かった俺は、姿見を持ってリビングに戻る。

 
姿が映らないよう気を遣いながら壁に立てかけ、二人にはこの姿見に全身が映るよう、肩を並べて立ってくれと頼んだ。

何をする気だと訝しげな眼を飛ばすアラサー組に、いいからいいからと笑顔を作る。


仕方が無しに肩を並べてくれる二人、更にしゃがんでくれるよう頼んだ。


ますます訝しげな表情を作る二人はゆっくりとした動きでしゃがんでくれた。


「これでいいか?」


遠藤の問いにOKだと返事し、俺は急いで移動する。
そしてイソイソ、学ランの上衣を脱いでカッターシャツ姿になると二人の後ろに回って勢いよく突撃。

アラサー組の首に腕を回した。


「ちょ、何するのよ。坂本」

「何の悪ふざけだよ、これ」
 

前のりになる二人に一笑して、「俺。二人に逢えて良かった」感謝の言葉を綴る。

急にどうしたのだと空気を壊そうとする遠藤と秋本を無視し(別れの瞬間だと思ったのかもしれない)、俺は二人にありがとうを伝える。
 

この2011年でアラサーになったお前等に逢えて良かった。再会できて本当に良かった。

おかげで居場所を見失っていた俺は、自分が1996年にとってどういう存在かが分かった。
怒らせて、喧嘩して、一蹴されても、窮屈な世界だと思っていても、俺には各々居場所があった。

自分なんてちっぽけだと思い込み、へそ曲がりのイジけ虫になって俺だけど、俺自身が気付いていないだけでこんなにも沢山の居場所があった。


俺は感謝したい。居場所を作ってくれた人達に。


失踪していた俺を最後まで諦めず、探し続けてくれた人達に。
 

そして今度は俺の番だ。

傷付けた人達に、支えてくれた二人に、恩返しをしないと。