秋本の運手の下、20分程度、乗車した末に目的地に到着する。
相変わらずメルヘンでファンタスティックなアパートだ。
遠藤には似合わない。
俺の意見に秋本も賛同して、「どこぞの庶民王子になりたいのよ」と皮肉っていた。
まったくもってそのとおりだと思う。
螺旋階段を上り、三階遠藤の部屋前に辿り着いた俺は早速、親友を呼び出すために呼び鈴を鳴らす。
しかし応答が無い。俺は首を傾げてもう一度鳴らす。やっぱり応答が無い。
「おっかしいな。寝てるのか?」
「あんた、少しは待つってことを覚えなさい。まだ鳴らして三秒よ。って、さ、坂本!」
秋本の焦り声を無視して、俺はAボタンを連打するような気持ちで呼び鈴を連打。
―――ピンポーン。
―――ピンポーン。
―――ピンポーン。ピンポーン。ピンポーン。
―――ピン「だぁあうっせぇえ! 近所迷惑になるだろうが!」
勢いよく扉が開かれる。
あ、なーんだ、遠藤起きてるじゃん。
良かった、約束をすっぽかされたかと思って焦ったぞ。
紙一重に、扉を避けた俺は私服姿の遠藤に「よっ」と挨拶。
こめかみに青筋を立てる遠藤は、まず詫びじゃないのかと俺の頭を鷲掴みしてくる。
ちょ…、俺、悪いことなんて何もしてないじゃんかよ!
ぶう垂れる俺に一抹の反省もないと分かるや否や、そのまま頭を押さえつけてくる親友。
痛くはないけど、き、気分的にはやめて欲しいぞそれ。背が縮む!