俺の姿が見えれば両親にあれこれ事情を話して、心配掛けたことや迷惑を掛けたことに対して詫びれるんだろうけど、どう転んだって俺はきっと父さん、母さんを泣かせてしまう。

安心させたい一心で語り掛けても、きっと親不孝にも彼等を泣かせてしまう。


それに俺にはもう時間が無いんだ。

余計泣かせてしまうだろう。


それは避けたい。

もう二度と、父さん、母さんに悲しい気持ちを味わわせたくないんだ。


どんなに自分達の事で手一杯で、息子たちに八つ当たりをしてしまうことがあっても俺はこの人達の息子。


愛情を注がれて育ってきた息子だから。
  

15年後の未来。

老けてしまった父さん、母さんの小ささを目の当たりにして、その表情と哀愁を感じて、俺は知る。


貴方達にとってどういう存在だったか、を。



(今すぐにでも帰りたい。だけどさ、)

 

せめて今は母さんの傍にいてやりたい。

大きなおおきな親不孝をしてしまった馬鹿息子ができる、精一杯の親孝行をしてやりたいんだ。


その日の夜、俺は母さんが部屋を去るまで傍にいた。

口を閉ざし、語りかけてしまうことさえやめてしまう母さんの気が済むまで、傍にいた。