「あれ?」見覚えのないお菓子箱が入っていた。
 
こんなもの俺、入れてないぞ。何が入ってるんだろう。

引き出しから取り出して、机上に置くとおもむろに蓋を持ち上げる。

中から出てきたのはCDの束やらゲームソフトやら腕時計やら真新しい財布やら、それにポストカード?

財布とポストカード以外の代物は見覚えがある。

これは兄貴のものだ。
なんで俺の引き出しに入ってるんだよ。

しかも俺が欲しいから、兄貴に譲って欲しいって言ったものばっか。
 



―…じゃあもしかして、これ、兄貴が俺の引き出しに?

 


 
お菓子箱を漁っていると紙切れを見つけた。

ノートの切れ端を破って入れられたもののようだ。

手に取って中身を読む。そこには書き殴られた文字。


『誕生日用』


その四文字に俺は泣きたい気持ちに駆られた。
 

俺の誕生日プレゼントかよ、これ。

なんだよ兄弟同士でプレゼントのやりとりとかしたことないじゃんかよ。


なに、らしくないことしてるんだよ兄貴。


帰って来たら、嫌味を飛ばしながら俺にくれるつもりだったのか。

それともプレゼントのを口実に、何かのパシリにしようとしていたのか。


どっちにしろ、不吉だよ。兄貴がこんなことをしてくれるなんて、ほんと、不吉だ。


プレゼントらしき代物の数を数えてみる。 

全部で15個、15年分の個数が菓子箱に詰め込まれていた。

兄貴は毎年、俺の誕生日にプレゼントを贈ってくれていたのか。


誕生を祝ってくれていたのか。

馬鹿みたいに俺の帰りを待ってくれているのか、なあ、兄貴。