そして自分の部屋へと足を踏み込む。
兄貴の部屋に殺伐としていたらどうしよう。
物をあらかた捨てられていたら…、気鬱を胸に抱えて飛び込んだ自分の部屋。
1ヶ月ぶり、否、15年ぶりの部屋に電気を点す。
息を呑んだ。
俺の部屋はあの頃、1996年とちっとも変わっていなかった。
いや少し、変化しているかもしれない。
綺麗に畳まれた毛布と皺の寄っていないベッドシーツ。
四隅に積み重ねられたCDタワーに、古びたコンポ。整理整頓された勉強机。
勉強机以外は変わった様子がない。
俺は常に散らかっていた筈の机に歩み寄る。
何年も使われていない鉛筆削りに科目ごとに綺麗に並べられた教科書類、埃被った辞書。
机上には俺の写真が額縁に飾られている(写真の俺は学ランを着て馬鹿みたいに笑っている。いつ撮られた写真だろう?)。
視線を引くと、卒業証書の入っているであろう長筒。
金文字で卒業式と刻まれている。
俺が受け取る筈だった卒業証書が写真と共に机上に飾れているなんて。
通学鞄を下ろし、椅子を引いて腰掛ける。
ざらついた机上を撫でた後、引き出しをおもむろに開けてみた。
ガラクタが詰まっていた引き出しは、あの当時のまんま。
だけど此処も整理はされているようだ。
ひしめき合っていた筈のガラクタ達が整列している。
ねりけしの入っているケースを手に取ったり、ロケット色えんぴつを眺めたり、ミニ四駆の部品を指で突っついてみたりして、今しばらく物で遊んでいた俺だけど、次の引き出しを開けようと思い立ってその引き出しを閉めた。
二番目の引き出しを開ける。