「でな、その辻木がよ。上司にそっくりなんだ! 口調から、たらこ唇から、加齢臭からまんまあいつそっくり! 上司に持った俺、乙じゃねえか!
っへ、しかも結婚して子供が三人いるとか、俺に対する嫌味? ああ嫌味ですか? どーせ俺はバツイチで子供も作れなかった負け犬だ」

 
家庭くらい持ってもいいじゃねえかよ。

上司もそこまでイチャモンをつけられちゃ困るだろうに。
 

「中学といえばさ、坂本。あんた、私が好きだからってラブレター送ってきたことがあったでしょ。
あれ、ハッキリ言ってクサかったわよ。女を口説くならもう少し、マシな言葉を使いなさいよね。女も軽いもんじゃないわよ」

こっちはこっちで思い出話に花を咲かせ始めるし…、勘弁してくれって。

しかもその話、俺は知らないぞ。
確かに俺は秋本が好きだからアタックしていたわけですが、ラブレターなんて送ったことがない。

文字にするなんて小っ恥ずかしかったからな。

それを言うと、秋本がちょいと困惑して「え。でも」と顎に指を絡める。
 

「あんたの名前が書いてあったわよ。確か、ラックに仕舞ってたと思うんだけど」


そう言って、秋本が寝室へ。

戻って来た彼女の手には色褪せた封筒が握られていた。クールな水色の封筒を受け取った俺は、便箋を取り出して中身を開く。


えーっとナニナニ。

秋本桃香様、俺、坂本健は宇宙一君のことを好きになってしまいました。

何故好きになったかというと以下省略。


……、うぇ、なんだこりゃっ、なんかサブイ単語が並べてあるぞ。

愛してるとか俺、使わねぇ!
好きは使ったことあるけど、愛してるなんて一度もッ。



……、しかもこの字体、見覚えが。


「おい。まさか」俺は白眼で親友に視線を飛ばした。


ひひっ。

悪戯に成功したような顔で遠藤はぶりっ子っぽく、てへっと舌を出す。
 

「ははっ、暴露します。それ、俺デース」


やっぱりお前かっ、この崩れ癖字に見覚えがあると思ったんだよな!