俺が白飯をおかわりする頃、二人はビールから日本酒へと手を伸ばしていた。

曰く、ビールだと腹いっぱいになるとか。

だから多くは飲めないらしい。

とはいえ、お前等、飲むペース考えろよな。

秋本、特にお前はペースを落としとけよ。
すぐ飲み過ぎて二日酔いになるんだから。
 

「はぁあっ。ったく、やってらんねぇんだよ。今日、取引先で発注ミスがあってさ。しわ寄せが俺にまできて…、マージ泣きたい。
んでもって上司は上司で、君は何をやっているんだと何故か俺にお説教。ミスしたのは俺じゃねえ、取引先だっつーの!」


あ、遠藤。

思った傍から酔いが回ってきたな。

やけに愚痴っぽくなってるぞ。


「私は今度進路についての三者面談があるんだけど、ホンット親馬鹿のバカがいてさ。うちの子は特別なの口振りで話を進めてこようとするもんだから、アッタマにくるわ。センセイにはうちの子の良さが分からないんですか?
……は? センセイは生徒を平等に扱ってるだけですけど何か? ははっ、もはやウケるんですけど、その親馬鹿っぷり!」


秋本…、超饒舌。ぜってぇ酔ってるだろ。

酒も良いけど、飯を食え。飯を。
 


飯を食いながら、俺はだまーって飛び交う二人の愚痴を聞くことにする。


お互いがお互いに自分の鬱憤を晴らしている。

その饒舌っぷりと、酔いっぷりには舌を巻いてしまう。


挙句、「おい坂本」酔っ払いがなんか俺に絡んできたし。


勘弁してくれとゲンナリする15を余所に、親友はグチグチと俺にこうのたまってくる。


「お前、俺の嫌いだった教師を憶えってっか? 中1の時の担任だった、あー…名前はなんだったっけ」

「…辻木だろ。体育教師の」

「そうだそれ! よく憶えてるな!」


バッカ、俺からしちゃまだまだ真新しい記憶だぞ。

なんたって現役中坊なんだから。