愉快気に秋本は首を捻って俺を見下ろす。
 

「お待ちかねよ」人差し指で前方を指す秋本に、意地悪だと苦言。

背の陰から出るに出られない俺に焦れた遠藤が、ぐわっしぐわっしと大股でこっちにやって来る。

「坂本!」怒声を上げる親友はあっという間に、秋本の後ろに回ってくる。

憤怒している相手を直視した俺は大慌てでスマートフォンを秋本に押し付けると、一目散に逃げた。


が、襟首を掴まれて捕獲されてしまう。


ズルズルと引き戻された俺は逞しい腕によって首を締めてしまった。

宣言どおり、俺はシメられた。


「ちょ。遠藤、ぎ、ギブ! 子供いじめ良くない!」

「子供ぶってんじゃねえぞ! テメェもアラサーだろうが、あーん?」


ぶってるんじゃなくって、俺は15のガキだっつーの! そりゃそれなりに大人かもしんねぇけどさ。

アップアップしている俺なんてお構いなしに、遠藤は何がごめんで何がありがとうだこの野郎が、と腕力を強くする。
 

く、苦しい…、成仏する前に召されそう。
 

腕を叩いてマジでごめんと叫んだ刹那、俺は自分の左手の変化に気付いて驚愕。

息苦しさもそのままに、動きを止めて恐る恐る左手の甲を見つめた。

指先が薄っすらと半透明化している。


左上半身の侵食が始まったんだ。

この調子じゃ三日も持たないんじゃないか。


持って最高一週間かもしれない。


遠藤が舌打ちする。


「やっぱあのご神木か」


切り倒したら解決すんだろ、そうだろ、子供染みた暴言に俺は頓狂な声を出す。

馬鹿、そんなことしたら最後、社会から問題視されるって。
罰当たりもいいところだし、何よりお前、そんな事件を起こしたら職を失うぞ。神社の神様だって怒るに違いない。