なあ永戸、お前、島津とタイプがまったく違うって言ってたけど、それでもお前等…、仲良いじゃん。


島津がそうやって怒ってくれるってことは、すっげぇお前のことを気に掛けていたって証拠。

お前にはしっかりとした居場所、あるじゃんかよ。


タイプはチガウだろうけど、学校では諍いがあるかもしれないけど、でも島津にとっても、お前にとっても結局は関係のないことだろ。なあ?


―――…お前等はそうやって何年も何年も、幼馴染みをしていくよ。


時が経っても変わらない関係でいるんだ、きっと。





嗚呼、俺も、おれも。

 



ギャンギャンヤンヤン喚いている二人のやり取りを遠巻きに見ていた俺は、ふっと風に背中を押されて目を見開く。

 
心地良い風が鼓膜を振動。俺を吹き抜けて向こうへと流れてしまう風は、忙しなく1996年の人間を手招きしているような気がした。


鼓動が高鳴る。


本能的に揺すられた俺は、二人に背を向けて転がるように駆け出した。


「あ。坂本」「ちょ、おい待てよ!」二人の呼び止めを無視して、俺は足を動かす。
  


風が呼んでいる、行かなきゃ。
 

時が呼んでいる、行かなきゃ。



俺を呼んでいる、行かなきゃ。