「徹也とタイプが合わないって思うのは本当だったりするんだけど。いや馬は合うんだけどさ、どっちかっていうと僕は大人しいタイプだから」

「それでもお前のことを気に掛けている。それってつまり、そういうことじゃね?」

 
永戸を見つめる。

キョトン顔で見つめ返してくる2011年の同級生は、ちょっと照れくさそうに、決まり悪そうに頬を掻いて、「坂本って恥ずかしい奴だね」悪態をつかれる。


ははっ、お褒めの言葉を頂戴しちまったな。

参ったね。
俺まで恥ずかしくなるだろーよ。
 


タイミング良くバイブが聞こえてくる。



永戸の携帯からだ。

どうやら着信らしく、忙しなくバイブが鳴っている。

ディスプレイ表記されている名前に眉を寄せる永戸、俺に画面を見せてどうしようと呟いた。

どうしようも何も出るしかないんじゃね?
お前、メールの返信してないしさ。

揶揄まじりのアドバイスをしてやると、観念したように永戸はボタンを押した。


刹那、



『天音っ、テメェエ、出るの遅ぇえんだよ!』

 
 
清々しい怒声が機具から飛んできた。

携帯から距離を置いて、顔を顰める永戸なんて知る由もない声の主はなんで早く出ないんだよ、とヤンヤン喚いている。

しかもメールを返さないとは何事だと舌打ち。

具合でも悪いのかって家に赴いたら、学校には行ったって言われるし。

事を知ったおばちゃんはカンカンだぞ。


んでもって秋本も心配して電話掛けていたぞ。

お前、今一体何処でナニをしてるんだ。


俺、体育の時間、お前の代わりに三回も試合に出たんだからな。


矢継ぎ早に喋る島津に押され押されて、「あぁあうんうん」永戸は生返事を繰り返すばかり。

よってもっと島津を怒鳴らせることになった。

その裏腹に隠されているのは、大きな心配なんだろう。俺は微笑ましくなってしまう。